病院長あいさつ
当院は2011年3月11日の東日本大震災による津波のため壊滅的被害にあいましたが、同年7月25日より仮設外来棟にて一般外来診療を、また翌年の2月1日からは41床の仮設病棟を増築し、全国唯一の仮設病院として一般入院患者を受け入れ、診療を行ってまいりました。2018年3月1日、震災より7年目にしてようやく高台整備地に完成した本設病院に移転しました。この間震災前後から病院を率いてくださった石木前々院長や仮設病院から本設病院完成へ指揮をとられた田畑前院長をはじめ医療従事者、地域および全国の方々(応援医師含め)のご支援・ご尽力を賜ったこと深く感謝申し上げます。
本設移転から約4年が経過いたしました。津波被害とその復興で全国的に有名になった岩手県陸前高田市の唯一の一般病床を有する病院として地域に根ざした医療を行ってまいりましたが、2019年よりの新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響は、当院および地域にも多大な影響がありました。岩手県沿岸南部の気仙地区(2市1町)のコロナ患者の重点医療機関として指定され、積極的に入院受入れを行ってきました。少子高齢化の影響もあり、設計時より1つの病棟(60床)のみの病院であるため、気仙地域のコロナ患者を受け入れている期間は、感染予防のため一般入院患者は大船渡病院など他院にお願いしなければならない、地元の患者さんも受け入れられないというジレンマに陥っておりました。今後はポストコロナ(ウィズコロナかもしれません)を見据えて、コロナ診療と一般(入院)診療の両立に取り組んでいけるよう知恵を絞って前に進めていく所存です。
また、当院は医師をはじめ医療人の教育にも積極的に関わっております。医療系学生、特に研修医に必修の1~2ヵ月の地域医療実習病院として選ばれており、毎月1~2名の研修医が当院で診療を行っております。実習最終日には外来にて修了証書を地域住民の皆様と一緒にお渡しする会を行っております。当院および当地域での医療実習が、将来的に地域医療を志すきっかけとなりうることを願いつつ我々自身も研鑽を積んでいく所存です。
全国的な少子高齢化、過疎化の波は当地域においても他人ごとではありません。当院では、「安心して暮らせる地域づくりのために、信頼される医療を提供する」を基本理念として掲げ、福祉・介護施設、歯科、調剤薬局、地域包括センターとのさらなる連携強化を図ってまいります。高田病院が地元にあって良かった、もしも具合悪くなっても安心だ、と地域の方々に思っていただけるよう、職員一同励んでまいります。まだまだ発展途上の高田病院ではありますが、これからもご指導ご支援をよろしくお願いいたします。
令和4年4月 阿部 啓二